“奇跡”など起こってない、という酷薄(誤配的)な見方も可能か。何故、蝶なのかも。


 パッケージのアプローチが、『4人の食卓』に似てる。手に取った時と鑑賞後とでは、印象にズレを感じさせる点も同じ。本編の(特にヒロインの)イメージをストレートに移行させにくい、というのが理由なのでしょう。本国では、“オアシス”の場面をパッケージに使ってるようで、デザインとしてはそちらの方が絶対に良いと思うのですが。


◎『オアシス』監督:イ・チャンドン(2002年・韓国)


 あまりに評判が良いのと、クラシカルな印象を与えるパッケージから腰が引けてしまい、なかなか手を出せずにいたんですけど、やはり予断はいけませんね。ソル・ギョングムン・ソリの演技、それにリアリズムとファンタジーの間を行き来する演出のバランスが絶妙。序盤の手鏡(と鳩)の場面から、完全に引き込まれました。
 社会から疎外された場所で、純粋な魂が出逢う。この手の話を、もっと酷薄さを強調した描写群によって語る方法もありうるはずです。けれども、作者の眼差しはあくまで優しい。それぞれが抱える小市民的な悪が断罪されることもない。O・ヘンリーを思わせるエピソードがあったりするものの、“オチ”をつけて世界を閉じ込めることもしてません。
 そうした諸々に、非常に好感が持てました。
(05/05/03,レンタルDVD)