『ローレライ』(128分)の運びは『タイタニック』の1.5倍速という印象

 『ダ・ヴィンチ』2005年6月号の特集1は<どうして今、福井晴敏の物語が必要なのか?>。もちろん、『ローレライ』『戦国自衛隊1549』『亡国のイージス』の映画化にちなんだ内容です。それぞれの樋口真嗣監督、手塚昌明監督、坂本順治監督のインタビューがあるほか、<福井(妻)が読み解く全著作>といった企画も。
 興味深かったのは、<福井晴敏の素 この映画なくして、福井晴敏なし!>と題し、影響を受けた10本の映画を本人が解説してるところ。「大作感」というのが要点のようで、みな長尺の部類に入るものなんですね、これが。90分〜100分程度で効率的に語ることを美徳としたような映画は、(敢えての選択でしょうけども)挙がってません。
 改めて調べてみると、体感で「長かったな」と記憶してる映画と、実際の尺数の長短は合致してなかったりします。ので、「大作感」を象徴する幾つか映画の上映時間を、メモってみました*1。福井セレクションのうち、8本は以下のリスト内に入ってます(どれがそうかは、『ダ・ヴィンチ』発刊直後なので書かないでおきます)。
 まあ、その8本はこれまでのインタビューなどを読んでると予測可能でもあるんですけど、残り2本には意外感がありました。それだけ、ちょっと書いときましょう。

 まず『グレート・ブルー』(1988,120分,完全版:169分)──

物語の神話性と、映像でのみ語ることのできる力が巧く結びついている。どこがいいのか非常に形容しづらいんですが心に残る、夏になると必ず観たい作品。(中略)ノベライズを書く自信がない。逆にその機能の差が重要で、小説を書く上で「映像ではここまで無理」という部分を意識します。(P.30)

 そして『ブレイブハート』(1995,178分)──

時代考証を意図的にゆるめ、歴史劇という食べづらい素材を、現代人に食べやすくする配慮をきちんとしている。「ガチッとリアルに第二次大戦モノをやっても誰も観ないだろう。通に文句を言われても構わない」と『ローレライ』の企画開発中によく引き合いに出した作品。(P.31)

  • 巨匠J・キャメロンの海洋大作
    • アビス(1989) 140分
    • アビス 完全版(1993) 171分
    • タイタニック(1997) 189分

*1:allcinema ONLINE 映画データベースで調べたもの。出所によって若干違いがあるようです。