ずいぶんと国際的な顔ぶれだなあ

 『季刊エス』第10号(2005年4月1日発行)の特集は<魔女娘>。別冊の『エスエス』(メイキング&投稿マガジン)も出て、いよいよ『コミッカーズ』の陣地に攻め込むのでしょうか。第9号は特集<ひみつのおともだち>を含めてどうにもまとまりがなく、書くことがなかったんですけど、最新号(といっても買ってから少し経つ)はかなり充実してます。

◎『季刊エス]』第10号,飛鳥新社ISBN:B0007YBOGI

 特集イラストはお馴染みの村田蓮爾(折込)、chicken(特集扉)に加えて以下の皆さん。さらに、安野モヨコシュガシュガルーン』から設定資料6点、ネーム・完成原稿3組など、五十嵐大介『魔女』から設定資料6点、ネーム・完成原稿6組など。

 忘れちゃいけないのは、フー・スウィー・チン*1(Foo Swee Chin, FSc)。見開きを使った表現力はピカイチ。小さくまとめてしまわないダイナミズム、それに描写と彩色のバランス(こうした雑誌に登場するアーティストの多くが描き込みすぎちゃった感を与えるのだけど、それがない)。
 作家として相当知られてきたはずですが、GONZOあたりが目をつけてたりしないのだろうか(っていうか、明らかに村田蓮爾つながりなわけで)。もはや抱えてる作品が多すぎて、新人のプロデュースには手が回らないのか…。大事に育て、腕利きの映像作家とのセッションを実現させれば、この人、時代を超えるマスターピース的な作品を生み出せるのではないでしょうか。
 乱暴に言っちえゃば、『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』のような(ただ、そこに引きずられちゃいけないのだろうな、とも)。幾つかコミックを読んでみた感触では、画のタッチとは異なる軽妙な味わいも備えてるようで、もう少し読み込んでみようかなとは思ってます。

季刊S (エス) 2005年 04月号

季刊S (エス) 2005年 04月号

 ほかでは、レンタルで観るかどうか迷ってる『月詠 MOON PHASE』の新房昭之(総監督)インタビューも有難かった。ドリフ(ターズ)流の断面セット(書き割り)のことが、かなり語られてます。新房監督については、ゴスロリアニメ『コゼットの肖像』を中心にWEBアニメスタイルでロングインタビュー()が行われてて、これも興味深い内容でした。

 それから、シルビアン・ショメ監督(『ベルヴィル・ランデブー』)と組んでた漫画家(BD)、ニコラ・ド・クレンに対するインタビューが、森本晃司湯浅政明お二人との座談会とセットで企画されてます。『ベルヴィル・ランデブー』では、版権がクリアにされないまま、勝手に(友人だったショメ監督に)ラフ・スケッチを使われてしまったのだというショッキングな話も…。

 まだある。異色のアメコミ・アーティスト、ジョシュア・ミドルトン(『Sky between branches』)のインタビュー。それに韓国の売れっ子、キム・ヒョンテのCGメイキングも。この人のコミックにはなぜか申し訳程度のメイキングコーナーがあったりするようなのですが、ここではペインターによる制作過程を、かなりこと細かく解説してます。イラスト素材は『鉄拳5』のシャオユーほか。

 まだまだ続くんですけど、今日はここまで。これだけてんこ盛りで1200円ですから、お徳かと。

*1:フー・スウィチンとも表記されます。アメコミ・ファンサイトのComic Archivesに詳細かつ丁寧な紹介がありますので、そちらをぜひ。