“自由”を描くシネアスト

 リバタリアン・フィルム“Libertarian Film(& Video)”と称するカテゴライズによって、映画が語られることがあると知りました。そのことに触れた<リバタリアンな映画>と題するコラムが収められてるのが、この3月に発行されたリバタリアニズムの「ガイド本」です(まだ読み始めたところですが、この本の出来には疑義を示してる方もいるようで、リバタリアニズムを知るためには、さらに色々と紐解いてかないといけないようです)。2940円。

◎『リバタリアニズム読本森村進(編著),勁草書房ISBN:4326101547

 そのコラム(担当は藤森かよこさん)の中で紹介されてるのは、205本以上の映画を扱っているという書籍、ジョン・オズボーン(Jon Osborne)著“Miss Liberty's Guide to Film and Video: Movies for the Libertarian Millennium”(Kingscote Publishing, 2001)なのですが、WEB SITEもあるようですね。ただ、「著者自身が、選択基準が大風呂敷(big tent)と認めてるぐらいなので、紹介されている映画が、左翼リベラル風正義映画とかぶりかねない」とのことで。そんな…。

 (リバタリアニズムとは)二十世紀後半のアメリカで使い出された用法で、諸個人の自由を最大限重視し政府による強制を最小限にとどめるべきだという、社会倫理や政治思想上の見解を意味します。それは「自由至上主義」とか「完全自由主義」とか「自由尊重主義」などと訳されることもありますが、最近では言語のまま片仮名表記されることが多くなりました。
(『リバタリアニズム読本』編著者まえがきから)

 現代作家では、クリント・イーストウッド監督が“LF”のカテゴリーにおいて重要な位置付けを占めるようなので、この際、観逃したものなどを再整理してみようか、とも。
 あとは、<リバタリアニズムの25冊>で紹介されてるアイン・ランド著『水源』(ISBN:4828411321)は、やはり読むべきなのか。アイン・ランド脚本、キング・ヴィダー監督、ゲイリー・クーパー主演で『摩天楼』(1949年)として映画化されてますが、この映画に対してはオズボーンは傑作、読本のコラムは大失敗作、との評価を下してます。『摩天楼』については、かつてマイケル・チミノ監督がリメイクを表明してましたが、こうした文脈がわかってくると、ナルホドという感じ*1クリント・イーストウッド監督が手がけても似合ってる題材のような気がします。

*1:俳優兼プロデューサーとしてマイケル・チミノをいちはやく監督に起用し、『サンダーボルト』(1974年)を撮らせたのがクリント・イーストウッドでした。