虚実を操作する情報の出し入れや順序にひと工夫欲しい
主役陣が大ラスに見せる充実感に満ちた表情が素晴らしく、若手女優のイントロムービーとしては申し分ない。ただ、音楽を題材としていることの楽しさがある反面、難しさもはっきりと表れている。シンクロナイズドスイミング(『ウォーターボーイズ』)と違ってドキュメンタルな側面が画面に表れてこない。要は音の上達を“画”として表現するには限界があるわけで。ならば、自主映画的な持ち味に頼ったものではなく、もっと説得力のあるディテールを持ったウェルメイドな青春コメディとされた方向性で観たかった、とも感じた。
(2005/05/05,レンタルDVD)
予告編の印象から、きっとノレないだろうと思って放置していたのだが。で、前半のギャグ的な展開の積み重ねには、やはりどうもノレずじまい。なのでコメディとしてはあまり感心できないのだが、話がどう転がっていくかを追っていく分には楽しめた。鑑賞後、オーディオコメンタリー*1の常盤貴子の笑い声などを聴きながら観ると、初見時よりは楽しいかな(?)と感じ、カメラワークの力強さ(撮影は山本英夫)にも改めて気づいた。沸いてる劇場(というのがあったかどうか知らないのだが)で観れば、それなりの幸福感を味わえたのかも…。
本題とは一見関係ないタクシー(寺島しのぶ)のシーンが私的にはツボで、娑婆とオサラバの前日、という組長(西田敏行)の状況設定は死(ゲロッパ!歌唱シーンは裏表としてのエクスタシー)のメタファーなのだと受け取った。タクシーが去った瞬間、その場所に孫の歩(太田琴音)が現れたりして。いでたちから判断するなら金山(岸部一徳)は、心優しき死神といったところか。ダブル美空ひばり、ダブル森進一、ダブル篠井英介とかも気になる配置。このあたりは、『銀狼怪奇ファイル』『真・女神転生〜デビルサマナー』等々、多彩な経歴を持つ脚本家(羽原大介)のテイストなのか?
あと、ニセJBの登場シーンには、『人間の証明』を連想。テーマとしては、実は似たところがあるような気も。
(2005/05/08,レンタルDVD)
*1:オーディオコメンタリー総体としては、かなり薄い内容。話者が多いのに進行役が居ないのと、皆がつい“鑑賞モード”に入ってしまい、発言が少ない。その発言も軽い感想や、思い出話が中心で…。