沈め! そして黄泉がえれ!!

 本来、“狙い撃ち”でもおかしくない人選のはずだが、「偶然、監督話が舞い込んだ」(SANSPO.COM)という。“天の配剤”と言わずして、なんと言うか*1樋口真嗣版『日本沈没』──。

 「“日本沈没”の4文字を見て、ためらうことなく引き受けた。勝手に構想30年、僕の中では30年なんです。武者震いが止まらない。起きるかもしれない現実と起きてほしくない気持ちのぶつかりを描きます」と興奮気味に語った。

 ──とのコメントにも表れているように、現実(に間近とされる東京圏の大規模震災)との折り合いで、演出家は極めてナイーブな立場に置かれるだろう。特撮を熟知しているから、好キャスティングだと言いたいわけじゃない。こうした難事業を、誠実に、でありながら極めて大胆に乗り切るマインドを持った作家として適材なのだと、私は思っている。

 8月下旬のクランクインを控え「怖がらせることを重視せず、人間の叫び、うねりを説得力ある映像で取り入れたい」と自信をにじませた。

 比類なきダイナミズムと衒いなきロマンチシズムを調和させるのが、樋口監督の才*2。原作者を最大限にリスペクトし、リメイクに寄せられた言葉を正面から受け止めた作品として結実させるに違いない。

 まさに不安な時代である。
 自然が残酷な猛威を奮い、人も心失くした事件を起こす。
 30年の時を越えて再び製作されるこの映画は、人々が『生きる』ということを自身に問い直すきっかけになることと期待する。
小松左京さん)

 いみじくも『生きる』という言葉が使われているが、これまでの本多猪四郎監督(+円谷英二特技監督)の血に、森谷司郎監督の血が合流し、黒澤明監督の精神の継承が、より色濃く表れてくるのでは、という予感もする。


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*1:発表資料の一つのようだが、「樋口監督が10歳の時に書いた衝撃の絵コンテ」を掲載しているNEWS SITEもあります。

*2:ローレライ』では、役者を優先したことと、予算などの関係もあって、ビジュアリストとしての本領を発揮し切っていない。脳内に構築した鮮烈なイメージのうちのかなりを断念したことは、『画コンテ集』を見れば分かる。製作費のステップアップ(20億円)が、どう反映されるかが見ものだ。