人気漫画の実写化とキャラクターの審級


(柳下穀一郎さんによる朝日新聞夕刊『頭文字D』評が興味深かった)


◎『タッチ』監督:犬童一心(2005年・日本)


 肌に合わなかった。液晶テレビで観る高校野球は、なんともフラットネスで、なんともローエネルギー。それが映画本体にまで伝播してるような感じで。弾まないのは何か計算があってか、と思っていると。あの主題歌(&走る長澤まさみ)。以後ラストの試合のあたりは、まあ盛り上がる。という計算なのか。しかし。そこから逆算し、もっと構築のしようがあったのでは。たとえ原作のダイジェストでも。現代の標準からすると情報が少なすぎる(それでよい場合もあるが)。脇を固める人たちにもっと演出が行き届いていれば、終盤が豊かに膨らむはず。なのに、顔を見詰め合うようなレベルで済ませてしまうところが多い。そして原作者もそんな指摘をしてるが、三人が「生まれたときから一緒だった」という“歴史”を、もっとこまめに画として織り込まねば。和也の死を、折り返し地点でなくより前段のストーリーポイントに置き、その上で不在を埋め合わせる仕掛けがどのように可能かを考えるべきだった。と思う。
(2005/09/16,AMCエクスピアリ16)


◎『NANA−ナナ』監督:大谷健太郎(2005年・日本)


 宮崎あおい(この暑苦しさは、地金としてあったものなのか? と思わせる)と中島美嘉の組み合わせを考案したことで大成功。男優陣は判断不能…原作ファンはどう評価してるのだろう。脇の描き方が丁寧で、特に平岡祐太(章司役)とサエコ(幸子役)は好演。好みとしては、美術の面でいくつか違和感を持った。NANA×2が住むマンション(?)の階段などはユニークなのだが、蓮の住んでいた倉庫などがどうも…。とか、ライブのシーンの撮り方がこれではいけないのではないか。とか、注文をつけたくなる点もあるが、全般には満足。
(2005/09/09,AMCエクスピアリ16)