レコる世間のエターナル幻想 vol.05


!! “記憶リセット映画”強化月間


◎『50回目のファースト・キス』監督:ピーター・シーガル(2004年・米国)


 どうやって愛が進展するの? と観る側に疑問を抱かせながら、その解答を的確に埋めていく筋の運びが、とにかく巧妙。ハワイの水族館という舞台設定も、存分に生かしている。日記を整理する場面が切なかった(下品ジョークをちりばめる一方で、こういった泣かせどころを押し付け過ぎない演出の上品さにも好感)。私には、『私の頭の中の消しゴム』よりも、こちらの主人公の設定の方が共感できた。



 記憶を題材にした映画とタイムワープを題材にした映画は、ほぼ同じニーズを満たすものとして存在しているように感じる。要は、「リセット願望(消したい・あるいは死にたい)」と「永遠願望(消さない・あるいは死なない)」という両極(二律背反)の間に折り合いを付けるためのマインド・ツールとなりうるのが、このジャンルの作品群なのだろう。もちろん道徳商品であるところの娯楽映画は、「生きろ」というメッセージを発しているわけだが。

(2005/11/06, DVDレンタル)