デジタル・エクストリーム・ビークル


◎『ステルス』監督:ロブ・コーエン(2005年・米国)


 進歩を見せるのは映像技術(VFX)のみで、人工知能謀反シチュエーションにも、美女虐待シチュエーションにも、演出上の関心はあまり向かっていない。せっかくのタイの風景も、水着の光景も、さしたる感慨を湧かせないもので済ませている(ロケ地変更のアクシデントが関係しているらしいが)。爆発(パイロテクニック)は確かに凄いのだが、いつもはもっとキレがあるんじゃないか…。


 と、苦言が多くなってしまうのですが、「ロブ・コーエン印」であることは間違いなく、特に三人のパイロットが順に危機に陥る中盤過ぎの空中アクション(の映像表現)は、この人ならでは。ド派手なVFXで満足を与えてくれる数少ない監督だと思う。
 脚本(コスト配分)の問題と言えるかもしれないが、終幕近くはややスタミナ切れを感じさせる。ジョシュ・ルーカスのキャラが弱かったかな…。ロブ・コーエン監督の作品の中では、やや大味な方かと(なにせ道具立てが大柄なので仕方ないのか)。


 『2001年宇宙の旅』+『トップガン』と見立てられているようだが、『ターミネーター1』+『2』の趣もある(ジョー・モートンが呼ばれているのは、そのためか)。HAL2000からT800を経由し、マシニック・アイボール<機械の眼球>モチーフが、この無人ステルス戦闘機E.D.I.に引き継がれている(デジタル・アイボールとして見れば『トリプルX』から引き続きの登場)。
 この監督が、不可視の機能(神経系)のビジュアル化(はやりのVFXではあるけれど)に執心しているのは、機械文明に対するオブセッションに由来(恐怖の所在の輪郭化)するのかな、と『映画秘宝』最新号の監督インタビューを読んで思ったりもしたのだった。

(2005/11/17, 錦糸町シネマ8楽天地)