コウモリとハサミ、そして暗黒


◎『バットマン ビギンズ』監督:クリストファー・ノーラン(2005年・米国)
 ビジュアル面での新味を追い求めすぎずに真実味を優先させることで、充実感を与える作品になった。コウモリの群集を描き、恐怖のシンボルとしての洞穴(落下)とホロコーストの毒ガス(散布)を通底させているところが興味深い。リアム・ニーソンはジェダイである前に『ダークマン』なので。
(2005/11/20, DVDレンタル)


◎『ハサミ男』監督:池田敏春(2004年・日本)
 長身をもてあまし、いつも居場所に困っているような面持ちの豊川悦司のキャラが、最大限に生かされた作品、と言えなくもない。原作を読んでいなければ、こうした趣向もありかも、と思っただろう。
 しかし、犯罪捜査を描いたさまざまな映画・テレビドラマの歴史などないものとしたような珍妙な描写の数々は、どうしたことか(刑事もののステレオタイプを批評しているのならよいが、そうは見えない)。
 自殺癖のある主人公の設定を執拗に描けば、この監督らしい作品になった可能性がある。にしても、なぜこれを撮りたかったのか…。原作者は『人魚伝説』を撮ったひとならと見込んで自作を委ねたらしいが。
 麻生久美子は大好きな俳優だが、印象に残ったのはむしろ三輪明日美だった。
(2005/11/22, DVDレンタル)


◎『カナリア』監督:塩田明彦(2004年・日本)
 この作品については、時間のある時に、きちんと書き留めたい。
(2005/11/26, DVD)


◎『エターナル・サンシャイン』監督:ミシェル・ゴンドリー(2004年・米国)
 ミシェル・ゴンドリーの映像感覚を生かせるストーリーであることは間違いない。そのテクニックを存分に披露した上で「映像主義」とは言わせないクオリティの作品に仕上げている。ただ、才気走った演出ではない、クラシカルなアプローチで観てみたいとふと思ったのは、こちらの感覚が古いせいか。
(2005/11/27, DVD)