論理的幽霊×倫理的ゾンビ?


◎『感染』監督:落合正幸(2004年・日本)


 1996年の『パラサイト・イヴ』(変身人間ファンタジー)、1999年の『催眠』(マインドコントロールスリラー)、2000年の『世にも奇妙な物語 映画の特別編・第一話「雪山」』(妄想心理ホラー)のイメージを継承しつつ、モンスターホラーと心霊ホラーのテイストも合流してる。しかるに、その正体は──えーと、よくわかりませんでした。
 ふと思い出したのは、10年近く前に買って未読のままのコリン・ウィルソン著『精神寄生体』(ISBN:4059000663)だが…。にしても、ブランコは謎。


 グランドホテル形式の病院サスペンスの味もあって、何とも形容し難いタイプの新手の映画にはなってる。
 落合監督は(テレビのはあまり見てないんだけど、映画では)かなり好きな演出家。ただ、適度に度を超してサービスしてしまう(でも、ぶっ壊すような非商業性には達しない)ことによって、作品を分かりにくくしてる(これは兼脚本、も関係してるかも)。
 王道的作劇を避けるにしても、やっぱり観客と一緒に事態を感受する人間をどこかに配置した方がよいのでは(キツネ面の少年がそうなりそうで、ならない)。こけおどしを幾らか抑制し、脳が生み出す無間地獄(悪夢)の転移を手際よく描く余裕があれば、『アザーズ』ぐらいのレベルを狙えたんじゃないか。


 とはいっても、見どころはたくさん。看護士役の星野真里真木よう子木村多江、それに羽田美智子草村礼子も加えて、女優陣の壊れゆく様が素晴らしい。なかでも、やつれた感がリアル過ぎる南果歩。憑依芝居には、もう目が離せませんでした。
 「怖い」とは思いませんでした(『アザーズ』の終幕は怖かった)。そこは惜しい。でも、結構好きな世界です。

(2005/04/14,レンタルDVD)