『サブウェイパニック』と『ジャガーノート』、どちらもおすすめ!(Amazon)


 『サブウェイパニック』系列のクライム・サスペンスだろうと勝手に想像してました。ところが。『ダイ・ハード』系列*1のスーパーヒーローアクションという、おそらく韓国映画としては新趣向の骨格に、“韓流”濃度のメチャ高い(国家と個を巡る)復讐譚と感傷的な恋愛ファンタジーをミックスした、かなり不思議な(+分裂した)テイストの作品なのでした。


◎『TUBE チューブ』監督:ペク・ウナク(2003年・韓国)


 『交渉人 真下正義』の予習として、先に観とこうと思いました。
 展開は、まさに一難去ってまた一難。しかも、その「一難」の一つひとつが、ある時は良い意味で、ある時は悪い意味でクドい。『シュリ』の脚色+助監督の監督昇進作として、かなり欲張っちゃったなという印象は与えますけど、見せ切る演出力はあると思います(ただ、『シュリ』同様、銃撃戦は退屈なのですが)。
 管制室(字幕では統制室)の描写が良かった。特に室長を演じたソン・ビョンホが好演。ここだけ取り出せば、よく出来た“ドライな”パニック・サスペンスを支える一部品のようではあるのです(『踊る』シリーズっぽいノリでもある)。そんな部品群を使って、緻密に組み立てられた娯楽作品を観てみたかった気もします。
 しかし。そうやってハリウッド映画そのままにつくっても仕方ないじゃん。と製作サイドは思ったに違いありません。そこで“ウェットな”韓流が合流。劇的な、あるいは叙情的な場面を生み出すための設定上のウソと展開上の無理がかなりあって、アクション娯楽作として判断するなら「?」なディテールが多すぎます。
 ただ、その判断軸が正しいかと問われると…。
 興行は振るわなかったらしく、埋もれてしまう一作なのかもしれません。『新幹線大爆破』のように後年評価されるためのプロトタイプ的な要素があるわけでもない。でも、日本で言えば『ローレライ』における“ハリウッドエンターテインメント+浪花節”を狙うような試みと志を共有する作品として、一見に値するものだとは思います。


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 最後になりましたが、ぺ・ドゥナ。とても魅力的で、見せ場も十分にもらってます。男対男のダイ・ハードな展開が一方にあって、一方でヒロインの印象をこれだけ際立たせる、というのはハナレ業かも。この映画を受け入れるかどうかは、彼女(を軸とした恋愛ファンタジー要素)に納得できるかどうかでしょうね。私はOK、とします。
(2005/05/01,レンタルDVD)


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*1:宣伝上の謳い文句は韓国版『スピード』です。