“内容と形式のアンバランス”

 “イラストレーターと漫画家を分かつもの──時間性をクールに操る漫画家登場”とのキャッチ。『Invitation』2005年6月号<鹿島茂の漫画美学入門>でレビューされてる新刊です。


◎『鶏肉倶楽部中村明日美子(著),太田出版ISBN:4872336720

 オーブリー・ビアズレーを思わせる個性的な描線で、どれか1コマだけとりあげても額に入れて飾っておけるほどに完成度が高い。ということは、そこに時間がたっぷりと封じ込まれていることを意味する。では、その本質的にイラスト的な絵をどうやってコマ割りしているかというと、これが徹底したクローズ・アップなのだ。
 いいかえれば、いったん1枚の絵に封じ込めてしまった時間性を1コマ、1コマと剥がしていき、時間の流れを作っていくという技法である。(P.113)

 アラン・ロブ=グリエクロード・シモンが多用した「中心紋の技法 mise en abyme」に近い、と評者は書いてるのですが、その「冷たい技法」っていうのがどんな効果を持ったものかを知るには、実物を見てみないと、ね。書店に探しに行きます。