石原慎太郎作品の“パクリ”だそうです

 CSの日本映画専門チャンネルで、『花とアリス』に合わせ、岩井俊二監督のインタビューを放映してました(「日曜邦画劇場」の枠のみの特典らしい。12日の本編後の方を偶然見たのだが、本編前の方は見逃した。聞き手は軽部真一アナウンサー)。
 ここで、映画仲間以外には初めて明かす裏話として、1994年の『ルナティック・ラヴ』は、石原慎太郎・現都知事*1が撮った短編映画の「パクリ」なのだという話があった(オマージュとかじゃなく、はっきりパクリなのだ、と)。原型は、オムニバスの一本として公開された1962年の作品です。
 五つの都市における青春と恋を描く、『二十歳の恋』──。既に代表作を撮った後のフランソワ・トリュフォー*2アンジェイ・ワイダの両監督はともかく、レンツォ・ロッセリーニロベルト・ロッセリーニの弟として作曲活動は有名らしい)、マルセル・オフュールの二人のことはよく知りません。
 ここに石原慎太郎を加えたオムニバスの五本のうちで、岩井監督が最も面白いと感じたのが石原作品だった。それがどんな作品なのかを身近な人に伝えようと思ったが、どうも伝わらない。なので、それをトレースしてみた、ということでした(もちろんアレンジはあるのでしょうが)。

〔東京〕工員の浩(古畑弘二)の心には秘めたひとつの美しい面影があった。工場への行きかえりに会う女子高校生(田村奈巳)である。ある日、彼は一心にナイフを作っていた。このナイフこそ彼の恋を成就させるただひとつのものだ。翌日の晩、彼は彼女にとびかかった。いまこそ彼女は自分のものだ。事件が迷宮入りを伝えられるある日、彼は新間社に電話した。「三宅文子を殺したのはおれだ……」
(goo 映画『二十歳の恋』<あらすじ>から)

 これが石原版で、岩井版の方は、日本映画専門チャンネルの紹介では以下のようになってます。

●「ルナティック・ラヴ」(1994年・16分・カラー)
監督:岩井俊二 出演:豊川悦司/ちはる
’94年「世にも奇妙な物語 冬の特別編」の1本として放送された。豊川悦司扮するカメラマニアの男による妄想殺人の物語。撮影がこれまで岩井ドラマを支えてきた金谷宏二からミュージックビデオで組んだことのある篠田昇へバトンタッチ。以後の岩井美学は篠田と共に紡がれていく。

 私は観逃したままでしたが、予告映像を観る限りは好みの部類。“「花とアリス」CS初放送24時間まるごと岩井俊二”のプログラムに『ルナティック・ラヴ』が入ってます。

*1:1958年には監督(兼原作・脚色)第一回作品として『若い獣』という映画を撮ってる。ボクシングが題材。来日したクリント・イーストウッドとの会見を知った上で<あらすじ>を読むと、結構興味深い。

*2:トリフォー版のみ上映される機会は何度かあったはずで、私は20年近く前に観てます。ので、石原作品のことは頭の片隅にあったが、内容のことまではよく知らなかった。