“爆裂人間”の系譜


 最新の『映画秘宝』2005年10月号で人体損壊を見世物として描いた映画を特集している。これは素晴らしい企画。扉のキャッチを拾うと“切株映画”“これが首チョンパ映画の世界だ!”“人体バラバラ映画大集合!”とある。“本誌読者待望企画No.1!”とも。
 ここでは「切株(人体の断面)派」と総称されているが、切断以外に、爆裂、溶解など系譜はいくつかに分かれるのかと思う。私は、「切断」はやや苦手(刃物が…)。むしろ、「爆裂」表現に惹き付けられてきた(その延長にメタモルフォーセス表現がある)。


 そのきっかけとなった映画を、あえて絞ると3組か(王道としか言いようのない選択ですが)。


 ホントに一時期に集中している。これは丁度、特殊メイクアップ技術が進展し、『スターログ 日本版』誌(旧)などで紹介されるようになったこととも大きく関係する。
 「切株派」は近年、『スリーピー・ホロウ』や『キル・ビル VOL.1』などに到達したとされ、たとえCGが使われていてもまだフィジカルなもの、という印象が強くある。
 一方、「爆裂人間」は私の好みとしては『新世紀エヴァンゲリオン 劇場版』のネルフ職員溶融シーンが到達点。身体以上に、内宇宙の方と近接しているのかも。


 特集の“100年の歴史”で扱われていなかったうち、重要なものとしてケン・ラッセル監督の作品に確か「爆裂」表現があったと記憶する。『恋人たちの曲/悲愴』(1970)だと思うのだが、正確な資料を持ち合わせていない。1981年放映のバラエティー番組『もんもんドラエティ』の中に手塚眞監督が撮った8mm短編を上映するコーナーが設けられていたが、そのケン・ラッセル作品を彷彿させる一編があった(手塚監督は“デ・パルマ”フリークなので、そちらからの影響の可能性もあるが)。

 SFX(アナログ)の時代からVFX(デジタル)の時代になって、切株派の映像表現(と文化的意味合い)がどう変容したかは、もう少し仔細に分析されてもいいのではないか。この『映画秘宝』特集をベースに図版を充実させ、人体改変の潮流やSFX/VFX技術のインサイド、コミックの話題なども交えて書籍化されることを期待したいところ。


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