透視(幻視)者たちの卑近なウォーズ


◎『レイクサイドマーダーケース』監督:青山真治(2004年・日本)


ネタばれがあります。鑑賞後にどうぞ)


 「大人のおこした戦争に、お前たち子供の力を最後まで頼りにした…」とはさすがに言わなかったが、同じ東宝+亀山P(CX)&役所広司、という布陣。未来を託される子供たち(悪意/善意)と水葬のイマージュ(湖/海)、隔離された環境(ともに美術は清水剛)、そして透視者としての魔女(=カメラ)。『ローレライ』とネガポジの関係にあるんじゃないか、などとも邪推したのだが…。念のためだが、青山真治監督と樋口真嗣監督との間には親交がある。青山演出のTVドラマ『私立探偵 濱マイク 6 「名前のない森」』に、樋口監督は役者として出演している。だからという訳ではないが、符合が多いのは確かでは。

  • “魔女”については劇場パンフで監督が自ら語っているのだそうだが、目下は未入手。『ワイルド・アット・ハート』もやはり関係しているらしいが。[05/09/15追記]

 それでダメなら。例えばこういうふうに観るのはどうか。──地球人に紛れて暮らす異星人家族が、子供世代を地球人社会に送り込む準備を始める。そのことに気づいた、ある一人の女性カメラマン=透視者(気づいてしまう人。『ゼイリブ』に居たよね。『マウス・オブ・マッドネス』にも居たかな)が、障害となる行動を取り始める。そして、まだ自身を制御できない子供たちが暴走。粛清を恐れた周囲が隠蔽を図る。普通これは脅かされる地球人の側から描くものなのだが、異星人の側から描いたらどうなるか。とでも考えないと、投げやりに見えかない最後のCG(骸骨)を説明しようがないような…(『ゼイリブ』、思い出しませんでしたか)。

  • ラストの骸骨。これは素直に『サイコ』を思い出さねば…。湖上に気泡が上がって「露見」を予期させるところとか。だとすると「憑依」テーマも?[05/09/15追記]

 『光る眼』にも通じるよね(ゴメン。未見)とか、もっと生きてるみたいな霧が湖に立ち込めていてほしいよねとか(それこそCGの使いどころでは)。…ダメですか(ちなみに、浮遊する死者のカットには、妥協して加えたものと言われる『ブレードランナー』当初版のラストをなぜか想起。あと『グラディエーター』もちょっと)。つくり手とこちらの間の映画的教養にあまりに格差があるわけで、邪推にも限界を感じますが。ただ、いずれにしても、もっと「抜け抜けとした」「野蛮さ」があっていいのでは。どうもナイーブすぎる。より以上、後味が悪くなければいけないのでは、と感じたりもした(CX製では限界があるだろうが)。


 薬師丸ひろ子(デビューが既に、透視者の役だったはず*1)。すべての作品を観ているわけではないが、これまでになく美しく撮られたショットがある。ただ、受験生の母、というのがどうもピンと来ないのだが、どうか。あとは、眞野裕子牧野有紗だが。伸びるかは未知数。
 これまで、青山作品にはあまり縁がなかった。いちばん活躍している時と、映画を観に行けなかった時期とが重なっているので。それもあって、特異点であるらしいこの一作で真価を判断するのは難しい。ウェルメイドなミステリーでなく、新本格(≠ライトノベル)あたりを原作に三部作とかでつくってみてほしいな。TVでよいので。 
(2005/09/09,DVDレンタル)

*1:野性の証明』のことですよ。『ねらわれた学園』もそうか。