天国にいちばん近い“さびしんぼう”


◎『初恋のアルバム 〜人魚姫のいた島〜』監督:パク・フンシク(2004年・韓国)


 過酷なメルヘン──。現世社会から離脱する想いの力によってのみ出逢うことのできる、忘れかけた幸福。それは取り戻せない「過去」ではない。記憶の海にそっと潜れば、触れることのできる場所にある(度を過ぎると戻れない危険はあるようだが)。現在に場面が還ってくる終幕で、『オアシス』に似た感触を得た。後で知ったことだが、パク・フンシク監督によるシノプシスは、『オアシス』のイ・チャンドン監督の強力な肩入れによって、映画化実現に至ったのだという。時空を超越したことに全く動じることなく、島の生活を満喫する娘のキャラクター造形が楽しい。母(の若い頃)と娘の一人二役を難なくこなすチョン・ドヨンも魅力的だ。単純な純愛ものとは違う。しかし、その「違い」を効果的に表現しきっていないように感じた。日本でのセールスのされ方が中途半端だったのは、それも理由ではないか。


[独断評…総合 6.5/10.0]
●設定 1.0/2.0
●物語 1.0/2.0
●俳優 1.5/2.0
●演出 1.5/2.0
●技術 1.5/2.0


(2005/09/27, DVD)

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