戦時下の動画論


◎『漫画映画論』今村太平・著、スタジオジブリ・発行、徳間書店・発売


 昭和16年に刊行された「アニメーション論」をジブリが復刻した。内容自体は「徹底した技術論」であるらしい。しかし、評者(大塚英志さん)は、それがいつ書かれた(体系化された)もので、何故「このタイミング」で復刻されなくてはならないのか──に着目した。 まあ、まさに“突っ込んでくれ”と働きかけてくるような出版企画に見えたはずだ、この評者には。『週刊ポスト』2006年3月10日号「ポスト・ブック・レビュー」から(P.143)。です。

(前略)ジャパニメーションコンテンツ産業と称してアニメ映画の国策化が平然と主張され、東浩紀を除く多くの研究者が無邪気にそこに合流しようとする現在、今村のこの仕事が「戦時下」という文脈抜きで、ジブリによって刊行されたことにやはりぼくは引っかかる。戦時下にアニメの可能性が論じられた先見性に驚くだけでなく、何故、戦時下にアニメがかくも積極的に論じられたかこそを同書を通じて考えなくてはならないはずだ。


漫画映画論 (ジブリLibrary)

漫画映画論 (ジブリLibrary)