“人間関係の商品化を深化させるだけ”

 『週刊文春』2005年6月23日号の<文春図書館>から、ほかにも幾つか。
 「宮崎哲弥謹製 ミヤザキ学習帳(67)」のキャッチは“心理学の帝国 「心の病」が多すぎませんか”(P.133)。何もかもを「心の問題」に帰結させてしまっていいのか。といった観点でのセレクション。縦軸を「学校という争点 - ケア・医療の現場」、横軸を「批判 - 情報開示」としたいつもの四象限マップに、以下の9冊をプロットしています。

  • 『「心の専門家」はいらない』小沢牧子(著),洋泉社
  • 『カウンセラーは学校を救えるか』吉田武男・中井崇章(著),昭和堂
  • 『聖者は海に還る』山田宗樹(著),幻冬舎
  • 『心理テストはウソでした』村上宣寛(著),日経BP
  • 『心理学への異議』P・バニアード(著),新曜社
  • 『誤診だらけの精神医療』西城有朋(著),河出書房刊
  • 『狂気と正気のさじ加減』S・ウォーカー(著),共立出版
  • 精神科医になる』熊木徹夫(著),中公新書
  • 『危ない精神分析矢幡洋(著),亜紀書房

 カウンセリングの普及が、むしろ悪影響をもたらすことなる。といった警鐘を鳴らす向きが多いことがわかる。国内発行では新刊となる『心理学への異議』あたりが、状況整理に向いてそうではあります。

心理学への異議―誰による、誰のための研究か (心理学エレメンタルズ)

心理学への異議―誰による、誰のための研究か (心理学エレメンタルズ)

 最後に一冊。書名があまりに直球なので、ちゃんと見もせずにキワモノ視してしまっていたのですが、失礼しました。著者は、「思わぬきっかけで黎明期のテレビアニメ界に飛び込み、企画・脚本の分野で幾多の名作に関わってきた」パイオニアの方なのでした。『巨人の星』『アタックNo.1』『ど根性ガエル』に『名探偵ホームズ』。制作会社社員として、これら名作を裏から支えて「出版における編集者の立場に近い」役割を演じてきた。『アタックNo.1』主題歌の作詞も、手がけているとか。面白そう。(評者は竹熊健太郎さん)


◎『テレビアニメ魂』山崎敬之(著),講談社現代新書ISBN:4061497898